NANDA-Iの定義と分類を読むと分かりますが,200年からは分類法Ⅱと称して「多軸構造」になっていて,7つの軸があります,第1軸は「診断概念」で必須得軸ですが,第7軸が「診断状態」を現し,多くは≪実在型≫そして≪リスク型≫です.≪ウェルネス・ヘルスプロモーション≫は,なんだかつかみどころのない観察が難しい診断です.
臨床で観られる看護診断の症状は,殆ど実在型です.リスク型の診断は,観察の判断が難しいと思います.
でも「転倒リスク状態」「皮膚統合性リスク状態」は社会保険診療報酬で点数化されている診断です.他にリスクマネージメントの観点からだと「身体損傷リスク状態」「対自己暴力リスク状態」「自己傷害リスク状態」等があります.
3年前にM・ゴードン博士が,僕たちの研究会の為に来日講演をしていただいたときに,こんなプレゼンを行なってくれました.
「アツ!何かが空を飛んでいる」「あれは鳥か,飛行機か,それともスーパーマンかな?」って・・・
「鳥だったら翼があるし,飛行機だたらプロペラがある.またスーパーマンだったらマントがきっとあるはず」って言うのです.
これは看護診断の観察方法を例えたもので,「空を飛んでいる」という事実は,「診断の手がかり」で,言い換えれば,診断の症状のなんです.例えば,「食欲がない」と言う訴えです.「栄養摂取消費バランス異常:必要量以下」だと,BMIは18.9%以下だし,「便秘」だと,排便がなくて,腹部の緊満感があるし,「不安」だと,オドオドしたり,落着きがなく,時には布団にふさぎこんでいるという症状も起こるのです.でもこれらは「食欲がないの・・・」っていう訴えの症状が共通しているのです.
この考え方で看護診断を推論できるのは,看護診断の各々の診断の手がかりとなる症状や,その副次的な症状まで覚えておかないと観察できません.
そこで,江川教授を塾長とする「看護診断寺子屋塾」では,臨床で観られる看護診断をリストアップ(.当時48名の臨床ナースによって選択)した看護診断から,診断の手がかりとなる「診断指標」を決定して,その指標の臨床的症状を抽出しながら,観察項目を機能的健康パターンの枠組みに基づいて整理したのが「成人看護系アセスメントツール(演習版)」として完成しました(NAR版Ver.1.0.現在Ver.2.0開発).
このツールは60の看護診断で成り立っています.そして,M・ゴードン博士の「機能的健康パターン」の11のパターンに層別して(すでにゴードン博士によって診断ラベルは層別されていますが),その枠組みに適応する看護診断を推論できるようになっています.その後,一部観察項目を改変したのが,現在,NAR版Ver.2.0として活用しています.
巷では,NANDA-Iの分類法Ⅱの13の枠で観察するのだとか.ロイ看護理論から観察するのだとか言われていますが,実際に看護診断の診断手がかりの症状・徴候を導きだしているのでしょうか?
もしかしたら,「枠組み」だけ使って,後は作成者の勝手な解釈で,ツールの中身を創作しているのではないでしょうか? |